Quantcast
Channel: 音盤再生家の音楽話
Viewing all articles
Browse latest Browse all 81

春の祭典を聴き直す ③

$
0
0
先頃、春祭の記事をアップしたが、その後各方面から突っ込みを戴いた。モントゥは出すべきだ、とか、ブーレーズは旧盤が良いだの、メータはロスが本当だの・・・
ところが、私は深刻に考えていない。何せ、この曲は何が良いとか悪いとかが私には判らないのである。それでも嫌いな曲では無いので、極力色々な演奏を聴いて楽しんでいる訳である。
ただ・・・CDの時代になってからは疲れてしまった。レコードでも、再生にはそれ相当に気を使うのであるが、CDは野放図に音が出て来るので要注意だ。
更に、レコードをお聴きの方も、この曲を聴く場合は極力新しいフォノイコを使うべきである。

色々な人が色々な事を言う。それだけ春祭は人気があると云う事だ。曲自体が面白いので、それぞれの違いを楽しめば良いのだと思う。
取り敢えず追加で5種+1を上げるので、暇な方はお聴き下さい。



モントゥー/パリ音楽院管 56年録音 LONDON盤LP
モントゥは春祭の初演者であるが、この曲は好きではなかったと言う。昔は、初演者だから取り敢えずこれは聴いて置かなければならぬと考えた。しかしその後、後述のメータ盤なんぞを聴くに及んで、モントゥ盤は古臭く感じて聴かなくなってしまった。
ところが、最近、物好きにも、この録音の状態の良いテープから、新たにCDを作ったらしい。私はレコードがあるので絶対買わないが、持っていない人は買うが良かろう。妙に細密な描写と、オドロオドロしき大太鼓で、中々にシュールな演奏だ。最近のデジタル録音に辟易している方には御勧めである。同じく古い録音でも、アンセルメなんぞとは役者が違う。



スヴェトラーノフ/ソビエト国立響 66年録音 MEЛOДИЯ盤LP
春祭をロシア物と考えると、フレンチなモントゥ/パリ音楽院は些か物足りない。スヴェトラは何時ものバリバリドンドンで爽快だ。演奏自体悪いとは言わないが、フェドセーエフのように面白いと云う事もなく、勇ましく賑やかな演奏を聴いている内に終わってしまう。これだけの力演でありながら心に残らない不思議な演奏だ。逆に、拙い感じのモントゥの方が印象が強いと云う皮肉な結果である。



メータ/ロスアンジェルス・フィル 69年録音 LONDON盤LP
この演奏のメータは若い。ピチピチと弾む若魚の如き印象だ。《春のきざし》からの軽快なテンポが受けの良い原因であろう。勢いで突っ走っていると云う感じだ。パリーの録音の冴えもこの盤の良さである。打楽器を近接で捉えているので、矢鱈と大音響でなくともクッキリと聞こえ、安定した再生が出来る。大体、トライアングルがこのようにハッキリと聞こえるのは衝撃的だった。後にロックの手掛けたショルティ盤は乾いた響きで、人口的な印象が強かったが、名匠パリーの手掛けたメータ盤は、より自然で聴き易いのである。



バーンスタイン/ロンドン響 72年録音 CBS盤LP
この頃のバーンスタインは円熟度が高まっていた頃で、LSOとの共演と云うのがそそられて購入したのだが、SQ録音で矢鱈と残響が強調され、キビキビした春祭を期待していると当てが外れる。残響が悪いとは言わないが、非常に不自然な聴こえ方なのは否めない。LSOは流石にIPOよりは上手いと感じるが、IPO盤のような閃きは感じない。バーンスタインにしては無難過ぎる表現だ。SQ盤はあっと云う間に消えてしまったが、これでは仕方が無い。音楽を聴くと云うよりは音に包まれる感覚を楽しむと云う、別次元の趣味になってしまう。これでは数ある春祭演奏のなかで、頭を出すと云うにはちーと無理がある。



ブーレーズ/クリーヴランド管 69年録音 CBS盤LP(SX-68)
私はブーレーズの春祭は高く評価している。何度聴いても面白い。好きな演奏なので、最初に出たSX-68カッティング盤と、後のSX-74盤を揃えている。しかし、困った事に、この両者を比べると、とても同じ録音とは思えぬ程印象が違う。68は音の輪郭がしっかりとしていて、音量が増大しても音の濁りが少ない。対して74は円やかで艶のある音色だが、音量が増大すると濁りが生ずる。
好みの問題だが、迫力の68、雰囲気の74、と云う感じである。gustav師はDGの新盤は角が取れた・・・と仰っていたが、この印象は多分SX-68の印象から来るものだと推察している。
ジャケットは68盤はシルバーに輝いて美しく、例の見開きジャケで豪華に感じる。



ブーレーズ/クリーヴランド管 69年録音 CBS盤LP(SX-74)
SX-74盤のジャケは見開きは無くなり、シルバー加工も無い。少々がっかりだが、音は美しい。私は常より、SX-68を高く評価してはいるが、この春祭に関しては74盤の方が合っていると思う。録音自体が新しくなったかの如き円やかさ、艶やかさ、奥行きがある。その分迫力は減ずるが、迫力を言うなら、他に幾らでも迫力追求盤がある訳で、ブーレーズの巧緻に長けた表現を味わうには74盤で充分である。さらにDG盤ではDレンジが広くPCで聴くにはちと無理があるのだが、この69年録音のCBS盤はPCで聴くには適している。細部が克明で聴き易い。












Viewing all articles
Browse latest Browse all 81

Trending Articles